久々に映画の感想です。今回は究極のワンシチュエーションスリラーとして以前から話題の映画『リミット』です
「リミット」(BURIED)
公開年:2010
監督:ロドリゴ・コルテス
制作国:スペイン映画
究極のワンシチュエーション
リミットが究極のワンシチュエーションスリラーと呼ばれる理由、それは全編を通して暗い棺桶の中しか映らない、登場人物もほぼ主人公一人という長編映画としては異例の舞台設定だからです。
ワンシチュエーションムービーといえば、「12人の怒れる男」が好きなのですがそちらはひとつの部屋の中で登場人物も多いのでその比ではありません。
物語は、棺桶に入れられて生き埋めにされた主人公が充電に限りのある電話で助けを求め続けるというシーンの連続で進みます。
しかし電話先の相手の顔が映ることはなく、それどころかこの映画で姿が映るのは主人公と、電話に送られてくる動画に映っていた女性の2人だけ。
棺桶を遠い画で撮ったり照明で照らすようなこともほぼありません。
主人公がライターや懐中電灯で照らす以外の部分は真っ暗で、一緒に生き埋めにされているかのような息苦しさを感じることができます。
スーパーブラック企業に勤める主人公
主人公がイラクで運送業者のドライバーとして働いていたという事実は、主人公自身の口から語られます。
まず拉致される危険性のあるところで働かされている時点で大変な仕事なのですが、ようやく担当者と電話がつながったと思ったら「拉致された時点で雇用契約はなくなるので保険は支払われません」と事務的に話す場面では背筋が凍りました。
テロリストとの会話でも狂気を感じるけど、この会社が一番ヤバいでしょう。。
焦りと混乱が伝わってくる
主人公は棺桶の中で電話をかけるしかありませんから、FBIや知り合い、勤め先の会社などと会話をします。
しかし話し始めたと思ったら留守電だったり面倒な手続きで別の担当者に回されたり散々な扱いを受けます。
いつ酸素がなくなるか、携帯の電池がなくなるか分からない状況なので観ている側もとてつもなく焦ります。
もっとも長く話すことになるFBIの人質対策チームのメンバーも信頼はできるのですが、本当に助ける気があるのか、単に不安を拭おうとしているのか分からなくなります。
観ている側が不安でいっぱいになる原因は、相手の顔が見えないという点に尽きます。自分は生き埋めにされて苦しんでいるのに涼しいオフィスで電話をしている相手を信じることができない。そんな電話ならではの相手への不信感を、相手の顔を映さないことで見事に表現していました。
脱出できなかったの?
気になるのが、自力で脱出できなかったのかという点。
作中では「電波が入るということは地中数10センチに埋められている」というセリフがあります。
棺桶もあちこちから砂が入ってくるほどもろいものだったので、なんとか脱出できたような気もします。
あとはテロリストのやり方がまわりくどく、大の大人を棺桶に入れてでかい穴を掘って埋めるぐらいなら直接銃で脅した方がよかったんじゃないの?と思ってしまいました。
典型的な後味悪いムービー
ラストをネタバレすると
「早く助けてくれ!」
「今探してるけど厳しいかも」
「やっぱり無理か・・・。諦めよう」
「もう少しで助けるぞー!」
「マジで!?」
「やっぱダメだったわゴメン」
という展開を上げたり下げたりして最後にドーンと落とすという流れなので
かなり後味が悪い一本になっていますね。
気になる点も少しありましたが、設定や謎解きが本筋ではなく顔の見えない相手とのやりとりの焦り、底辺の労働者が置かれている環境への皮肉などが本当にリアルに描かれています。いい意味で吐き気のする気持ち悪い映画ですね。。
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